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Film Copyright by Galerie Nothburga (2021)
tap codes (2021), Galerie Nothburga, Innsbruck/Austria
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tap codes (2011), Essl Museum, Klosterneuburg/Austria
叩く記号 - 響く断面 - 言葉の破片
回想と展望
音楽家バーバラ・ローメンとグンター・シュナイダーはアメリカ滞在中に、石片で木を叩く手法を用いたミヒャエル・W.シュナイダーの木版画に出会う。
ミヒャエル・W.シュナイダーは地面に這いつくばり、木板に自然の中で見つけてきた石を叩きつけたり打ち付けたりして作業をする。それはときには規則的または不規則的な音をたてる。石の性質、叩く力、石を打ちつけた跡の深さや密度、そして木板の性質によって、その木板に残った跡が結びつき、形になってゆく。そのように生まれたレリーフは墨で塗られ日本の伝統技法に則って木版画にされる。
木版画作家ミヒャエル・W.シュナイダーとバーバラ・ローメン(ツィンバロン)とグンター・シュナイダー(ギター)3名がklopfzeichen(叩く記号)と名付けてはじめたパフォーマンスは、当初この木版画制作の音響的、リズム・パーカッション効果への興味から始まり、それは、間もなく造形芸術(木版画)と音楽の本質的な相関関係への興味へと発展していった。時間的・空間的造形の関係性、同時性、違う芸術分野の持つ相違と共通性、そして作られてゆく版画が音楽を書きとめ記録する媒体として理解され、そしてその逆、音の中で造形芸術の消えゆくものとして顕現されることなどがテーマとなっていった。
本来 -あるいは誤って?- 明確に規定された造形芸術と音響芸術、つまり、見る芸術と聞く芸術という分野の区別がここでは問いただされもしくは解きほぐされる。造形芸術家は聞く耳を獲得し、音楽は視覚的に知覚される。芸術分野の枠を超越したパフォーマンスのもつ原始的な性格は、木版画制作と音響・音楽的な造形(制作過程、独自の演奏技法)の実験的な手法によってより鮮明に表現されている。
ミヒャエル・W.シュナイダーの木版画は日本にその技術の基礎を持つものだが、それはその後このパフォーマンスが klopfzeichen & klangschnitte(叩く記号&響く断面)として発展した際に、日本人の造形芸術家(三井田盛一郎、磯見輝夫、瀬川麻衣子、宮寺雷太)と音楽家(安原雅之、宇波拓)の参加へとつながってゆく。20世紀における日本と西洋の芸術と音楽もつ緊密な関係性がその基礎となり前提となり、そこから新たな関係性、関連性の定義が生まれた。プリントメイキングからプリントメディアへのパラダイムの変換は木版画のもつパフォーマティブな性格をより強化し、2005年以降の本パフォーマンスの先駆的な役割はそれによりさらに重要視されるようになった。
2009年、オーストリア人文芸家ローザ・ポックとペーター・アホルナーとの出会で、音に言葉の即興が加わる。それは、このパフォーマンスの表現とリフレクションの地平をさらに広げた。ここでも異なった芸術ジャンルは新たに互いを解釈し豊かにしていった。文学的な次元は、造形芸術と音楽に新たにドラマトゥルギーと進行に関して文学ならではのダイナミズムを与えた。言葉の意味が加わることで、新たな連想と発想の契機が生まれた。一見自明に見える分類が問いただされ、新たに定義されていった。3つの芸術分野を結ぶのが音である。音楽として、テクスト情報を伝える音として、また作業の音として、様々な機能が音の中に明らかに表現される。木版と木版画は画として、そしてこの場のアクションの肖像、記録として造形される。音と言葉の即興 - sprachsplitter (言葉の断片)- は音響的な躍動から物語へ、そしてさらにこの場で起こっていることについてのディスコースにまで及ぶ空間を開いてゆく。
日本語の会話では、事実と発話が一致していることよりも、情報伝達し合う中でできる網、会話を通じて獲得される基本的な合意が重要であるといわれる。
一義的なものでなく、共有される開放性がこのパフォーマンスの目的である。
翻訳: 眞道杉
© バーバラ・ローメン, グンター・シュナイダー, ミヒャエル・W.シュナイダー
TAP CODES - SOUND CUTS - SPLINTS OF SPEECH since 2005